人生は割と想定外

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様々なジャンルのニッチな話題を一方的な独断と偏見で深掘りしてく雑記ブログ

レンタカー借りたら欠陥車で店長が400キロかけて謝罪しにきた②

①(前記事)の続き…

 

車の下を覗き込んだ私は目を疑った、というかビビって2度見した。マフラーとエンジンを繋ぐパイプがすっぽり抜けていた。ややわかりにくいのでもう少し説明すると、つなぎ目の溶接が甘くて外れていたのだ。排気ガスがマフラーにいかず、そのまま上ののぼり車内に充満するという驚きの事態に発展した。これはもう、セルフ自殺だ。しかし我々は富山に行くという壮大な計画の途中。死ぬわけにはいかない。かといって場所は長野の山奥。戻るにしても数時間かかる。まさに行くも地獄。引くも地獄。どうしようもない状況と排気ガスで皆少々頭がラリっていたかもしれない。


仕方なく店に連絡したのだが、そこは気合いの入ったヤンキー車を手配した店。そう簡単には認めないし、普通に考えてそんなことは起こるわけがない。はたから見たら我々はただのクレーマーだった。しかし、持つべきは友というか、今回一緒に旅行に参加した友人の中に、こういったクレームに得意な友人がいた。彼は高学歴で法律にも詳しく、普段は優しいのだが、揚げ足を取らせたら右に出るものはいない。彼の活躍でわずか20分後に店長を引きずり出すことに成功した。


このままの勢いでなんとか対応してほしい旨を伝えた。対応してくれることになったのだが、レッカー移動みたいなものをイメージして我々には信じがたい状況になった。それは、とりあえずこのままの状態で現地まで行って欲しいということだった。このレンタカー屋は全国展開している。が、実態としてはフランチャイズ展開のため名前貸しというか、店舗単体での運営になっており、他の店舗とは繋がりがないそうだ。結論としては東京から富山まで店長が台車を持って謝罪に来る、ということだった。


富山で予定を控えていた我々はこの提案に納得し、マフラーに穴を開けたまるで直管レベルの迷惑な轟音をかき鳴らし、富山へ向かい出発した。富山に到着し、轟音をかき鳴らしたまま観光を楽しんだ。その日の夜、レンタカー屋の店長が宿泊先へ到着した。レンタカー屋の店長というくらいだから、まじめな服装かと思ったのだが、来たのは店長ではなく、その店のオーナーだった。顔と体型は清原、服装は石田純一、足元は素足に革靴という成金のような風貌でさすがにあ然とした。開口一番、オーナーの低姿勢ぶりにやられて許してしまった。オーナーは乗ってきた車を我々に差し出した。車種は新車のエスティマで、燃料代も今回の費用も全て無料になった。クレームのパワーはすごい。


最後にオーナーが私に聞いてきた。『この近所で修理工場って知りませんか?』どうやら、自分で直して店に帰るらしい。


サービス業って大変だ。私はこのお店を今も愛用している。